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2010-04-23

鰹(かつお)の話

もうすぐ5月、木々の新緑が美しく、「目には青葉山ほととぎす初鰹」という山口素堂の句が頭に浮かびます。

江戸時代の魚の格付けでは、鰹は上魚ではなく中魚でしたが、「女房を質に入れても初鰹」と江戸の人々は初鰹を珍重し、幕府が価格を定めるまでは高値で取り引きされました。
文化9年(1812年)、初鰹1本を3両(1両約9万円)で買ったという記録も残っています。
初鰹は、はしりの時期を過ぎると1?2分になったといわれていますが、「初鰹女房に小一年いわれ」と、庶民にとってはずいぶんの出費だったようです。

鰹は回遊魚で、南の海で育ち、2歳になった1月頃にフィリピン沖から黒潮に乗って日本沿岸を北上し、3月には九州や四国の高知沖まできます。
4月頃、駿河湾沖で鰯を食べて4kg前後になり、5月、さわやかな味の初鰹となります。
最近、2・3月に獲ったものを初鰹として売っていますが、まだ十分大きくなっていないせいか、旨みが少し足りないようです。
また、紅葉の頃、三陸沖を南下する旨みたっぷりの戻り鰹もおいしく、鰹は一年で2種類の楽しみを提供してくれます。

大振りの鮮度のよい鰹は、ATPの分解が十分に行われていないので旨みが足らず、叩きにしてイノシン酸を生成させます。
また表面を焼くことにより、皮の近くにある脂質を飛ばして、 旨みが均一化されます。
小ぶりの鰹は、皮つきのまま刺身にするとおいしく食べられます。
皮が硬い場合は、熱湯を皮目にかけて霜降りにするとよいでしょう。
                           
       
高増 雅子(フォーラム運営委員、日本女子大学)