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2010-06-22

カラス

川越に転居して、ゴミ収集所で、何羽ものカラスがビニール袋を食いちぎって残飯をあさっているところを、家の周囲でも、通勤途中の住宅地でもよく見かけます。
時には、襲いかかられるのではないかと恐ろしい思いをします。
高知では交通量の多い地域に住んでいたためか、ゴミ荒らしは猫でした。
カラスが人間の生活圏に侵入し、害を及ぼしている事態を、実感しています。

話は変わって、カラスの文化財への侵入です。
6月、19日、20日と京都で健康教育学会があり、フォーラム学生会員の方達が、京都御苑の見学企画をしてくださった仲間に入れていただきました。
見学は、事前に申し込みをしておき、当日は入館許可書を持参し、さらに身分証明書の提示を求められる厳重さです。
学会に差し支えないように、早朝の見学でした。

御苑は梅雨の晴れ間で、雨に洗われた栴檀や松の若緑と黒く重厚な木膚葺き屋根の曲線の美しさに感動をしました。
その木膚葺きの屋根が、カラスに荒らされているとのことです。

木膚葺き屋根は、かつてはヒノキの板で葺いたが、大量のヒノキを伐採するので、ヒノキの保全のために木の皮を用いており、そこに虫がつき、虫を狙ってカラスが突き、並んでいる木皮を乱し、穴をあけ、そこから水が漏れて腐り、屋根の痛みが早まり、宮内庁は計画的に予算化しているとの話でした。
確かに上空にはカラスが沢山飛び交っていましたが、御所の屋根は高く、遠く、カラスの被害は見えませんでした。

昼休みに京都大学(学会会場)に隣接する吉田神社に行きました。
なるほど、山門の屋根に木皮が乱れて穴があいたところがありありました。
ところが、そこには何と、木膚3枚分300円、板1枚分500円のお布施が仕組まれていました。勿論、お布施は出してきました。

京都ではどこを歩いても歴史を、伝統的な巧みの技とその美しさを感じます。
外国人観光客ばかりではなく、日本人の私たちも、日頃にはない「日本らしい美」に感動します。
「日本の伝統美の保全には金がかかる」、京都に住む友達が、毎日のようにお祭りがあり、たくさんの神社、仏閣があり、この文化財の保護のために税金が高いと、嘆いていたことを思い出しました。
確かに300円、500円の僅かな個人の浄財で保全できるものではありません。
文化財はお金を掛けなければ保全できないのでしょうか。

今朝も、ゴミ収集所にカラスが3羽、残飯をあさる姿がありました。
知恵者のカラス、人間の暮らしにとっても良い行動習慣が形成できれば……そんなわけはないのに、好ましい行動の変容とその習慣化をどう支援できるか、学会での議論を思い出し、馬鹿なことを考えてしまいました。

針谷 順子(フォーラム副理事長)