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2011-01-17

魚の話 「ぶり」

先日、町の魚屋さんと話していた時、「今売れている魚は、鮭とぶりの切り身だけ」といっていた。
関東以北で冬の魚といえば鮭、関西、北陸の冬の魚はぶりであり、正月や祝い事に欠かせない魚である。

師走の頃においしくなる魚なので、魚へんに師を書いて鰤(ぶり)。名前の由来は、「あぶら多き魚なり」から、あぶらのあを略してぶら、それがぶりになったという説、あぶらが訛ったという説、霜の降るころがおいしいので降るがふり、それがぶりになった説などさまざまな説がある。
現在、日本橋室町2丁目にある鰹節問屋「にんべん」につたわる家内年中行事」で見ると、文化12年(1815)元旦の献立の夕食に、「 鮭 鰤 塩鰹の類 ただし茶漬 」とあり、江戸時代より、出世魚として食べられていたようである。

ぶりは、成長するにつれて呼び名が変化し、関東ではわかし→いなだ→わらさ→ぶり、関西では、つばす→はまち→めじろ→ぶりとなる出世魚である。
しかし、最近は養殖もののぶりを、はまちというようになってきている。
養殖ものは、鰤の稚魚(もじゃこ)を採取して海面の生け簀で飼育したもので、天然ぶりに比べて背に脂肪が多く、身の色は全体に白っぽく見える。
冬のぶりは産卵に備えてよく太り、脂もたっぷりのっており「寒ぶり」と呼ばれ、特に富山湾で獲れたぶりは最高の味といわれている。

ぶりは、刺身、すしだね、塩焼き、照り焼き、西京漬け、汁物、かぶと煮、あら煮、ぶり大根、ぶり鍋、粕汁、フライ、赤ワイン煮込み、バター焼き、薫製など一匹を余すところなく使える魚である。
ちなみに、私のお勧め料理は、塩焼きである。

高増雅子(フォーラム運営委員、日本女子大学)