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2012-11-29

田作り

 12月に入り、お魚屋さんにも冬のおいしい魚がたくさん並んでいます。
お正月のお節料理の中にもいろいろな魚が詰められていますが、その中でも尾頭付きの魚の代表格が、「田作り」です。

 幕末の江戸の庶民の正月には、雑煮とともに「重詰の品は田作(ごまめ)・数の子・座禅豆(黒豆)の三種なり。しかし家々の式により一定せざれども、この三種通常用ゆる所なりとす」とあります。
また、日本橋の「にんべん」に伝わる「家内年中行事」にも、昼 鱠(大根 人参 ごまめ)、汁、平(煮物)とあります。
案外、質素なお節料理だったようです。

 田作りは、カタクチイワシの幼魚の乾燥品、およびそれを調理した料理名で、 別名「ごまめ(鱓、五万米、古女)」ともいいます。
田作りは、田畑の高級肥料としてカタクチイワシが使われていたことから、豊作を願って食べられたといわれています。

 カタクチイワシは、下あごが上あごより短いため、片口イワシといわれ、地方によって「セグロイワシ」とも呼ばれています。
マイワシに比べ細く小さいイワシで、大きい物でも14~15cm、日本で漁獲されているイワシの45%近くを占めています。
カタクチイワシ科の魚を英語でアンチョビといい、イタリア料理でよく使われるアンチョビもカタクチイワシを塩漬けし、オイルに浸けこんだものです。

 ずいぶん昔になりますが、正月料理の実習で田作りを作るのに、煮干しを用意した助手さんがいました。
同じカタクチイワシですが、煮干し(イリコ)は煮てから干したもので、主に出汁をとるのに使います。

 電子レンジを利用すれば、簡単に田作りを乾燥させることができます。
乾燥させた田作りを醤油、みりん、砂糖を煮詰めた液で絡めます。
シンプルな田作りもおいしいですが、赤唐辛子や七味唐辛子、ゴマ、くるみ、アーモンドなどを加えてもおいしくなります。
今年のお節料理にぜひ、田作りを作ってみてください。
                       

高増雅子(フォーラム理事・日本女子大学)