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2014-04-10

「地域に根差した民間団体の取組事例集
―つくって、食べて、伝え合う食育―」

内閣府食育推進室の「地域に根差した民間団体の取組事例集―つくって、食べて、伝え合う食育―」(平成26年3月発行)に、当フォーラムが紹介されていますので、その全文を以下に記します。

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団体名 特定非営利活動法人 食生態学実践フォーラム
“食にかかわる専門家を支える”

業種:特定非営利活動法人
設立:平成14 年11 月 活動開始:平成14 年11 月 N PO 法人認証:平成15 年4 月
構成員数: 会員209 名(理事長 足立己幸)
所在地:東京都新宿区

1 食育に関する取組を始めた契機や目標
1980 年代の初めから、全国的に、子どもも大人もいきいきした生活をしていない人・出来ない人が多く、健康問題が多様化し深刻になるなか、栄養指導や地域栄養活動がそれらの改善に貢献できていないことを憂う栄養・食関係者たちが寄りあい、問題解決を求めて「食生態学実践グループ」を作り、学習をしながら、研究と実践活動をすすめていた。
この活動目的や方法を組織的に深め、より多くの関係者と共有し、活動の輪を広げることを願い、20 年余りの活動実績を土台に平成14年に「NPO 法人食生態学実践フォーラム」(以下「フォーラム」)を設立した。

20 年余りの活動は
①食について生産から食卓まで、栄養・健康を含む“生きる力”の形成、次の社会的な活動への参加という“食の循環”の全体像を重視すること
②食生態学研究で得た理論を家庭生活や「食育セミナ-」等での“生活実験”で検証し、
③教育や活動目的に合ったプログラムや教材開発をすすめつつ実施することを特徴としている。

日本国内はもとより、世界各地で生活する人々の「食」を支える専門分野の人々や、その活動に対して、食生態学や関連分野の研究・実践の成果を活用する事業を行い、地球上に生活する全ての人々が、より健康で、生活の質を高め、更にはそれぞれの立場で、地域性を生かした人間らしい社会形成に貢献することを目的とする。(定款第3 条)
実際の食育活動において、学習者の主体性を重視し、“指導から支援へ”シフトして進めている。
この意味を含めて、本「フォーラム」を“食の専門家を支えるNPO 法人食生態学実践フォーラム”と呼んでいる。

2 団体における推進体制
理事13 名、監事2 名、会員数209 名
理事長、理事会、次の6 部門から成る部門長会議、運営委員会、必要に応じて構成する課題別委員会、会員の総会等により、必要事項を検討し、全体調整し、活動をすすめている。
① 調査・研究部門-食生態学や関連する分野の調査・研究事業
② 実践部門-栄養・食を支える専門家の質を高める研修や食育セミナー事業
③ プログラム・教材開発部門-食生態学や関連する分野に関するプログラム・教材開発事業
④ 国際協力部門-栄養・食を支える専門家の質を高める国際協力に関する研修事業
⑤ 情報発信部門-「フォーラム」の事業内容や課題を含む食生態学や関連する分野の情報発信事業
⑥ マネジメント部門-事業が円滑に進むよう会員の管理や外部団体との連携事業等

3 他の主体との連携・協働体制
行政や保健医療福祉関係者、教育関係者、農林漁業関係者、教育機関、ボランティアやNPO 団体、民間企業や民間団体等、多様な主体と幅広く連携を行っている。
「フォーラム」のコンセプトは食について、生産から食卓まで、生きる力の形成とその社会活動への展開という循環性を重視してとらえ活動をすすめることにあるため、食の循環に関わる多様な組織や人材との連携・協働は必要不可決である。
加えて、活動のゴールに学習者達の生活の質(QOL)と地域・環境の質(QOE)のより良い共生を掲げていることから、学習者たちの生活、社会活動や地域・環境に関わる多様な組織・人材との連携・協働も必要不可欠である。一つの活動が作り出す連携・協働が次の活動の方向・内容・方法に影響し、新しい連携・協働を育てつつ現在に至っている。
連携・協働を行う上での工夫として、課題や相手によって多様であるが、基本的には、次の点を重視し、実行すべく努力している。

◯連携・協働する組織や人材と、課題に関連する人々の“食の目指す方向や方法”について、相互理解をし、長期にわたる連携・協働の可能性を確認し合う
◯相互の特徴、特に強みを活かす可能性の検討をしあう
◯連携・協働することによって、それぞれが本来の活動理念や目的達成にプラスになるかを確認しあう(中期、長期的に見て)
◯前項について、自分たちの組織にとっての具体的なメリット、乗り越えるべき課題等を内部関係者とできるだけ具体的に話し合う
◯活動計画に具体的な役割分担を明記し、共有する
◯計画から参加の“参加型”ですすめる、PDCA の全プロセスを共有する。必ず文章や図を描いて、活動の全体像、とりわけ具体的なゴールと期待される成果の共有を行う
◯活動の成果やそのプロセスを「フォーラム」のホームページ、ニューズレター、機関誌(食生態学―実践と研究)や学会等で公表し、共有する
◯「フォーラム」の特徴は食生態学や関連分野の科学的根拠を駆使できる点、必要に応じて研究チームを構成し、活動の有効性を検証しつつ、その成果を実践に取り込むことができる点にある
◯関係者の研修も共有する、等また、問題点としては、主として次の点である。
◯上記のとおり実際の活動の前段階での話し合いや準備を重視しているので、連携・協働する相手組織の意思決定者と活動担当者の連絡がうまくいかない組織等との連携・協働は難しい。転勤等で担当者の交代が多い場合も全体の進行が難しくなる。このような時には手間と時間がかかるが、振出しに戻って内容の共有を努力してきた。
◯上記の手順を踏むためにはアセスメントや評価に経費が必要な場合が多い。しかし、成果が見えにくいためか、予算として認められないことが少なくない。

4 食育を推進するための具体的な取組や工夫
年間に、前項2 に記した6 部門が担当して実施した活動は、9 種類、168 回、参加者約5,911 名である(平成25 年次事業報告)。その中の主な3 活動を取り上げる。

≪代表的な取り組み事例≫
◆ 「子ども自身がリーダーになる食育セミナー」の開発と普及
食育セミナーは約30 年間、継続して実施。平成25 年度は、埼玉県川越市の社会福祉法人健友会みなみかぜと医療法人西部診療所の活動理念等を融合して「ハートを食事でプレゼント!」のサブタイトルで実施した。
参加者は小学生15 名、地域の高齢者(施設利用者を含む)7 名で、スタッフは「フォーラム」会員、両法人の管理栄養士・栄養士、調理師、看護師、社会福祉士、ケアマネージャー等17 名、地域の農業者と田んぼの会メンバー4 名の応援も得た。隣接市にある女子栄養大学学生8 名は子どもたちの学習グループのお姉さん役を担い、かつ食育支援の現地研修を兼ねた。
開講にあたって、子どもたち自身がグループ名をつけ、それぞれが何を学びたいかの学習目的を含む自己紹介をした。

つぎのプロセスを踏んでいる。
① 食の大切さや食事づくりの基本(「3・1・2 弁当箱法」に基づく食事・食事づくり法)等を学ぶ
② 高齢者や介護が必要な人々の心身の状況について学ぶ
③ グループごとに参加した地域高齢者にインタビューをする
④ その人にぴったり合った1食を設計し、材料を発注・購入し、調理し、メッセージを添えた昼食(弁当)として仕上げる
⑤ グループごとに“共食”する
⑥ このプロセスや課題を発表しあい、“食べる人にぴったり合った食事づくりとその大切さ”を体験学習。
⑦ 2 日目の朝早くから、地域農業者の講話を聴き、田んぼで稲の生育等を見学し、「食の循環」の理解を深める。
⑧ 子どもたちが学習についてのセルフチェックをし、この学びを家族や友だちに伝えることなどを話し合い、閉会。

複数団体の、多職種の連携で実施するため、次のことを心がけて実践した。
① 活動のコンセプト、目的・ゴール、そのための方法(全体スケジュールと全担当者を一覧できる作業等分担表の作成)、目的やゴールに対応する評価方法、結果の公表や社会的な展開等について、関係者が事前に十分に話し合う。話し合いの内容を出来るだけ図やイラストにし、異なった専門職種の人びとが理解し、課題を共有できるようにする。
② 実施前日、実施中の毎日、終了直後に、各段階での情報交換や発生した問題の解決法等について、具体的な話し合いをする。とくに、参加者が子どもや高齢者の場合は、心身の健康状態の変化もあり、即時の対応が重要である。
③ 学習目的やゴールに合った教材を作成して、使用する。今回も参加児童・生徒用はワークブックを、スタッフ用は付記資料を含む冊子を作成し、活用した。
④ 評価は、参加者の学習成果、当日スタッフのプログラム評価、「フォーラム」としての活動全体の評価の3 層構成で実施する。今回も参加者のセルフチェックとスタッフによるチェックシートを用いた観察法の両面からの評価を行った。学習成果については知識、態度、行動変容に注目し、個人別に質的分析を行っている。
⑤ 「フォーラム」会員や他への公表を積極的に行うことは、“食を支える専門家を支える”フォーラムとして重要なことである。この事業も関係者や一般に公表し、多くの人が活用できるようにする。

◆「さかな丸ごと食育」の専門家養成と普及
「フォーラム」は食育基本法で重視する「食」や食育ガイドですすめる「食育の環」(両者ともに、生産から食べるまで、栄養・健康を含む“生きる力”の形成、次の社会活動をすすめる“食の循環”を重視している)の全体像を理解し、日々の生活で実践できる力を育てることについて、魚を例に学ぶ食育プログラム「さかな丸ごと食育」を全国的に展開している。
平成15 年から3 年間にわたって、一般財団法人東京水産振興会の研究事業の一環として「日常的な魚摂食とその効果に関する食生態学的研究」(研究代表者 足立己幸)が行われた。
この成果をふまえて平成22 年から同魚食普及事業の一環として講師養成と普及が「フォーラム」に委託された。企画・実施・評価・次の課題提起の全コースを連携・協働ですすめている。

食育プログラムの特徴:
① 基礎研究である「日常的な魚摂食とその効果に関する食生態学的研究」の成果をふまえて制作した「さかな丸ごと探検ノート」(ワークブック) を主教材とする
② その活用マニュアル「魚と人間と環境の循環―「さかな丸ごと探検ノート」活用に向けて」を用いた養成講師や専門講師を養成する
③ 専門講師や養成講師は担当する学習者の発達段階、食へのニーズやレデイネス、ライフスタイルや環境に対応した食育プログラムを検討・開発しつつ、食育の環を広げている、等。

学習者は子どもから高齢者まで、全世代に広がっている。まず学習会に参加し、「さかな丸ごと食育」サポーターに認証される。希望によって栄養・食・教育に関する専門家は研修を重ねて養成講師として、地域に根差して活動することができる。
参加して認証を受けた人は専門講師25(0)名、養成講師455(100)名、サポーター14,782(5,482)名である。
(数値は平成22 年度からの認定総数、かっこ内は平成25 年度認定数)
学習会・研修会では共にグループや組織からの要請または「フォーラム」からの呼びかけで計画・実施・評価・認証をすすめている。
学習グループも多様であり、複合的になってきた。
例えば、小・中・高校、専門学校・大学等教育機関で実施する場合も以下の様にさまざまに展開されている。
学習会は、クラス単位、学年単位、全校生の単位、等。栄養教諭・学校栄養職員、家庭科や理科等特定の教科担当教員のグループ、学校の校長を含む全教員。さらに保護者会や地域住民が参加する場合もある。
連携・協働する母体も多様である。市町村や都道府県の教育委員会、栄養改善推進協議会(これも県レベル、市町村レベル,有志グループ等がある)や、漁協婦人部や各種生活クラブ等、「食の循環」に関わる多様な職種の組織が関わることが多い。
食育担当の行政機関が「食の循環」の関連組織に呼びかける学習会や研修会も増加し、まさに「食」育や「食育の環」の輪が広がる機会につながっている。連携の連鎖、“連携の環”が進んでいるということができる。
例えば、全生徒・児童が参加する場合(当該学校との連携、教育委員会との連携等)特定学年主任や教員グループとの連携、保護者会との連携になる。
時には学校に付設する学童保育所や児童館との連携、地域の社会福祉協議会との連携、農水産業者や流通業者の組織等との連携である。

専門支援者である養成講師の養成について、連携の環が量的にも質的にも広がるほど、さらに重要になることは、食育の目的やゴール、コンセプトの共有と展開であるので、この点から、心がけて、実践していることをあげる。
① 主教材「さかな丸ごと探検ノート」のコンセプト、内容等についての理解を深めるために刊行した活用マニュアル「魚と人間と環境の循環―「さかな丸ごと探検ノート」」を用いた研修会を実施している。
専門講師による講義と、参加者各自が専門性や所属している食育現場のニーズに合わせて作成する「さかな丸ごと食育」支援計画書を書き、ワークショップ方式で情報交換・討論をし、その結果をふまえた支援計画書修正案を作成、再度討論し、現場で活用できる力を養成する。研修を担当する専門講師は参加グループのニーズに対応した内容と方法をその都度作成して、実施している。
② 「フォーラム」は全国4 か所に地域性を活かした“地域コア”のシステムを持ち、コアが独自の養成講師研修会をすることを勧めている。地域性の高い、喫緊の課題やそれに適した講師依頼も可能なので、実効性が高いからである。
③ 関連する学会や研究会で発表する機会を支えている。その成果を発表や論文等へ掲載するプロセスが、異なった専門性や異なった組織と連携・協働する実力を高めることにつながる。
④ 全国各地の食育活動を一堂に会してそれぞれの活動の特徴を発表し、情報を共有し、次の活動の課題を話し合う場の提供である。

平成25 年度は「「さかな丸ごと食育」フォーラム2013」を開催した。
発表内容の検討、発表、会場等からの討論等で、自分たち自身の活動を客観化し、総括する良い機会になること、並びにそのプロセスを関係者と共有できることを期待した。
当日の内容を冊子にして、関係者に配布し、それぞれの立場での展開について検討する。

◆“「3・1・2弁当箱法」を基礎とする食事・食事つくり法”の開発と普及
生活している人びとが、それぞれに“何をどれだけ食べたらよいか”を考え、実践する力を育てる目的で開発された料理選択型食教育教材である“「3・1・2 弁当箱法」を基礎とする食事・食事づくり法” (以下、「3・1・2 弁当箱法」) について、「フォーラム」は全年代をカバーし、多様な食育活動をすすめてきた。
日本の食文化のシンボルの一つである“主食・主菜・副菜とその組み合わせ”を核料理とする枠組みである。

①「3・1・2 弁当箱法」について、生活実践研究をふまえた教材としての有用性の検討
◯「食生態学―実践と研究」第6 号(2013 年)で特集として「3・1・2弁当箱法」を取り上げ、コンセプトと歴史的な取り組みの経過、さまざまな実践事例と課題の提起、開発された教材の紹介等を関係者の議論に供している。
◯低栄養若年成人の栄養改善への生理面や食行動面への効果の検討(公益社団法人米穀安定供給確保機構の研究事業、名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報第6 号で公表)、他

② 専門家養成研修会の開催と評価
◯食生態食育プロモーターズ(食育教材「3・1・2 弁当箱法」)の養成講座の実施。ブラッシュアップ講習会(3 名)、B/C コース講習会(22 名)
◯日本健康教育学会総会ワークショップ”自分が何をどれだけ食べたらよいか“のイメージを育てる―「3・1・2 弁当箱法」を基礎にした食事・食事づくり法の実践において、実践事例を発表し、かつ参加者による食事づくり実習の技術支援、等

③ 関連する教材作成と活用
◯食育カレンダーの企画・制作・普及
1985 年「フォーラム」の前身である「食生態学実践グループ」が食事バランスカレンダーとして発刊以来、毎年発刊している。各月にモデルメニューが「3・1・2 弁当箱法」「食事バランスガイド」での評価を伴って、写真で紹介される。食育の一口メッセージを伴っている。平成20 年に横浜でICD 開催時には英語版も作成した。
◯「適量でバランスのとれた1 食づくり3・1・2 弁当箱法」(編著 足立己幸、企画・発行 公益社団法人米穀安定供給確保支援機構)発行。
◯都道府県、市町村の食育推進事業のプログラムや教材開発へ技術協力をする。新潟県新発田市や同長岡市、他
◯文科省教科書への資料提供。2 種の「中学校保健体育」に採用され、技術協力している。
◯食育キャラクター「メジャコン」並びに「3・1・2 弁当箱法」の5 つのルールを歌いながらやってみる「メジャコンのうた」を制作し、食育に活用されている、等

④ 「3・1・2 弁当箱法」を主教材とするプログラム開発・実施・評価への支援
◯生活や食環境が壊滅的に変化した東日本大震災被災地への食事提供や食の自立力形成を目的とする食育プログラム開発・実施・評価へ活用している。

<参考>仮設エリアから発信「からだ・心・くらし・地域や環境にぴったり合った食事づくり共食会」:宮城県南三陸町への食支援
宮城県南三陸町と公益社団法人米穀安定供給確保支援機構、「フォーラム」が連携し、住民の食事の偏りや調理意欲の低下が顕著であったため、「3・1・2弁当箱法」をベースに、「南三陸町仮設エリアから発信“からだ・心・くらし・地域や環境にぴったり合った食事づくり」のワークブックを作成し、これを用いて“共食会”を開催している。
「南三陸町の一人一人が自分にとってのぞましい食生活を営む力を持って、生活、社会活動や町づくりをいきいきとできること」などをねらいとし、地域に根差して普及啓発している。
共食会では食生活改善推進員を中心とする共食会サポーター、そのスキルアップを支援する町や地元NPOの管理栄養士(食生態食育プロモーターズ)等が協力し、ワークブックを用いて次の活動をした。
① 事や健康について簡単なセルフチェックや実測
②自己紹介とその内容を、からだ・心・くらし・地域や環境のどのぴったりに合うか分け、それぞれの食事とのかかわりや大切さを模造紙に書きだして、学習ゴールを確認
③「3・1・2弁当箱法」のルールを活かして食べる人にぴったりの1食を作る実習 ④皆で楽しく感想を話ながら会食 ⑤これからどのような暮らしがしたいか等を話し合い」を行い、その後、共食会サポーター、食生態食育プロモーターズ等がプログラム評価をして、次の共食会へつなげている。
平成25年度は町内10箇所の仮設住宅にて15回開催し、延230名が参加した。

⑤ 海外の専門機関での活用と展開
◯韓国ソウル大学家政大学校食品栄養学部教授らの研究で低所得階層の子どもたちへの給食について、主食3・主菜1・韓国の食文化の象徴であるキムチを含めて副菜2 の組み合わせの栄養学的効果を検討する実践研究への協働
◯国際学会で、上記食育カレンダーの紹介をしたことがきっかけで、香港市の学校給食はごはん3・野菜料理2・主菜1(この順に修正して)の組み合わせで実施し、栄養教育に取り組んでいる、等である。

≪人材育成等≫
「フォーラム」は“食を支える専門家を支える”ことを主目的としているので、活動全体が常に人材養成やそのネットワーク形成を含む活動になっている。なかでも継続的に系統だった養成をしているプログラムについては下記の通りである。

① 「フォーラム」総会研修会で「食生態学―実践と研究」の特集テーマ等について基調講演、シンポジュウムと総合討論等。平成24 年は「2011 年3 月11 日に何が起こり、どうしてきたか、どうしたらよいか―「食生態学の実践と研究」を活かして私たちはこれから何を、どうするか?」、平成25年は「NHK 番組サラメシはどのように創られ、人びとの心や食につながっているか」を取り上げた。
② 「食生態食育プロモーターズ」養成
「フォーラム」会員が、食に関わる専門家としてプライオリティの高い重要課題について敏感に対応し、その解決に向けた理論と実践力を習得し、学習のプロセスを含む情報の発信者となるための講座である。
所定の単位を取得した者を認定している。
現在「3・1・2 弁当箱法」を基礎とする食事法を主教材とする者が44 名。
「さかな丸ごと探検ノート」を主教材とする者が25 名養成され、活躍している。
③ さかな丸ごと食育サポーター、養成講師、専門講師の養成(関係するグループや組織・団体との連携)
④ 国際協力に関する専門家養成(外国人専門家への食支援は独立行政法人国際協力機構や一般社団法人農山漁村女性・生活活動支援協会と、日本人青年海外協力隊員派遣前研修は公益社団法人青年海外協力協会との技術協力、等)
⑤ 地域拠点となるコア活動の展開:神奈川、名古屋、埼玉、宮城の4 地域で、各地域性を活かしたコア活動を展開している。

≪取組を行う上での課題≫
① 「フォーラム」の会員はそれぞれが食・栄養・健康等の分野で社会的に活躍している人々であり、質の高い活動ができる人材やそのネットワークを保有しているので、連携やネットワーク形成をうまくすすめることができる。しかし、会員各自の本務が多忙で、活動に専念できる時間が確保できない。休日や夜間の時間帯で活動することが日常的である。(克服していない状態)
② 現在は管理・運営費が総事業費の約半数を占めている。前項①の克服のためにも補助的な仕事を担う人件費が必要であるが、これ以上の支出が出来ない。今までは会員の個人的な経済的負担で活動してきた部分が少なくない。(これも克服していない状態)
③ 事務所のスペースが狭い。全国的に展開する活動なので、交通の便を優先したので、事務所の賃貸料が高い。一方、目的に対応したプログラムや教材開発を重視しているために、開発した教材等を保管し、会員の要望に応えて使用可能なようにしている。
そのため、事務所の空間が狭く、運営委員等が作業や、会議をするスペースがとれない時がある、等である。
上記のいずれについても、安定した活動資金が確保できない問題がある。

5 評価の手法と成果
◯定量的評価
原則として全活動について、各活動計画書(目的やゴール、学習者、方法、評価方法、期待する成果とその公表や社会での活用、担当者(協働・連携を含む)等)を提出し、各事業部門で共有している。
活動の結果報告についても同様である。さらに「フォーラム」全体で共有し、展開活用する手順を踏んでいるので、提出された内容を活動レベル、部門レベル、「フォーラム」レベルで量的評価をして、次の活動等に用いている。
◯定性的評価
事業の種類や方法によって異なるが、それぞれが学習の目的やゴールに対応する質的評価を実施している。
特に課題について学習者の知識・態度・行動の各段階や行動変容に注目すること、並びにそれらと関連要因との関連を明らかにすることを重視した質的な評価を行っている。その基本となる情報収集の方法も事業によって異なるが、学習者のセルフチェック、計測、質問紙調査、面接法、観察法、環境調査法等を複合的に活用している。その結果について具体的な取り組みや工夫に示したように、研究として吟味し、他の事業に展開活用できるようにし、必要に応じてグループや地域比較をし、または年次経過を明らかにし、質的評価の質を高めるように努力している。
◯成果
事業によって異なるが、「フォーラム」全体に活動の輪が年代を超え、全国的に広がっている。特にワークブック形式の教材を共有する食育プログラム、PDCA をふまえて、連携・協働の役割分担を明確にしてすすめる食育のマネジメント手法や、学習者(子どもや一般生活者)の食育学習、それを支援する専門家の支援、これらを包括する組織や地域レベルが重層的に関わる、いわば複合学習・複合研修の方法論は、栄養や食分野を超えて福祉や教育分野でも関心が高まっている、と評価されている。

6 食育に関する取組の今後の課題や展望
今後の課題としては、会員増、とくに「食の循環」のキーステーションである生産・流通部門の関係者が増えること、活動の活力になる若い世代の人材が増えることであると考えている。
食は、本来、身体的にも精神的にも社会的にも、次の活力の再生産の源、いわば健康の資源であり、人間らしい生活・生きがいの資源です。私たちが活動法人として願うのは、まさにこうした人間らしい食とそれを支える社会・環境の両者のよりよい共生である。
このより良い共生を実現するためには、今、食育に求められているキーワード“食を循環としてとらえ、食育を循環ですすめる”ことが重要である。
“食の循環”をとらえる力やセンスは日常的な「共食」(食事をいっしょに食べることはもとより、準備する、情報を交換し食生活を営む力を形成し、伝承するなどの“食行動を共有すること”を含む)によって形成されると、考えられる。「フォーラム」食育活動の連携・協働はまさに「共食」そのことであり、多くの人々に「共食」の機会を提供することにつながっている。
東日本大震災における食からの支援では、少しずつだが確実に、食育を循環で進めようとする仲間が増えてきている。このパワーを、幼児・成長期の子どもたち、若者、親世代、高齢者と世代を超えた「共食」につなげることができれば、もっと充実した「共食」の環が可能になるだろう。
大津波、震災、原発事故の複合汚染で地域の食の循環が切断された日本社会だからこそ、食を循環としてとらえ、のぞましい循環がうまく進むような食育が必要であろう。
「フォーラム」は今までの実績と専門性の高いチーム力を活かして、実践と理論の両面からすすめる“共食育活動”の環を広げて、いきたいと考えている。