ラグビーと出会って
友だちに誘われて
50歳をすぎてから、ラグビーをはじめた。観戦は大好きで、母校のラグビー部を昔から応援してきたが、自分が実際にプレイすることになるとは思ってもみなかった。
それが友人に誘われて、最初はあまり乗り気ではなかったのでずっと断っていた。しかし、一度くらいは顔を出さないと悪いかなという軽い気持ちでグランドへ。その日から、ラグビーの虜になってしまったのである。
この歳になって「できないこと」がある!
今までいろいろなスポーツをしてきたし、それなりに運動神経もよい方だと思っていたのだが、ラグビーにはできないことがたくさんあった。
ボールは前に投げてはいけない、後ろへ移動する走力が必要、そして、目の前のボールだけでなく全体を見て判断する力が要求させる等々、今までやってきたスポーツとはまったく違った。
「できない」ということを思い切り突きつけられる。この歳になって、たくさん怒られる。できないことがありすぎて、すごく悔しい。でも、すごくすごく楽しい! 新しいことをはじめるって、なんて面白いんだろう!
コロナの蔓延で、練習中止が長期にわたった。そのときに思い知る。練習をやりたい! グランドに行きたい! 私はラグビーが大好きなんだ!
「仲間を信じろ!」レジェンド吉野さんの言葉
昨年11月、ようやく練習が再開した。
私が参加させてもらっているクラブには、ウィングとして早稲田大学、サントリーで活躍し、日本代表にもなった吉野俊郎さんがいる。吉野さんは誰よりも早くグランドに来て、ストレッチを入念にし、からだをつくってから練習に臨んでいる。30代の若い男性も多い中で、俊足を発揮する。ラグビーに対する真摯な態度にいつも心打たれる。もちろん、吉野さんは私より年上だ。
そして、私のような初心者のおばさんにも、真剣に教えてくれる。あるとき、吉野さんに「仲間を信じろ」と言われた。ラグビーはいわば陣取り合戦のスポーツ。スペースを見つけてボールを回し切り込んでいく。私は全体を見る力がなく、ついつい目の前のボールを追いかけてしまう。吉野さんが言いたかったことは、「俺がこっちを守るから、お前はそっちを守れ。仲間を信じて任せろ」ということなのである。元日本代表の言葉に私はしびれ、ますますラグビーが好きになっていく。
ラグビーは多様性を尊重したスポーツ
つい先日、谷口真由美さんが書かれた『おっさんの掟:「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館)を一気に読んだ。
1月に開幕したラグビー新リーグの発足に向け、法人準備室長・審査委員長を務めたラグビー協会理事の谷口真由美さんが、突如としてラグビー界を追われた。ラグビー界は、男性中心主義、時代遅れな序列主義など「おっさん」的価値観が支配する、ダメな日本社会の縮図。その内幕を明らかにした本だ。
ラグビーは、ほかのどのスポーツより多様性を尊重する。その証拠に、100キロを超える巨漢から、私のようなおチビにまでそれぞれの役割があり、チームが構成させる。またワールドカップは、国の代表として出るのではなく、地域の代表が対戦する大会だ。さらに、オリンピックやサッカーのワールドカップなどとは異なり、代表選手になるのに代表国の国籍は必要ない。本人が当該国で生まれているなどの条件を満たせば、代表になることが可能なのである。
ワールドラグビーは「ラグビー憲章」を掲げ、その骨子は「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」である。日本のラグビー協会には、この憲章に恥じるようことはしてほしくない、とラグビーを愛する者として切に願う。
越智直実(フォーラム理事・有限会社OCHI NAOMI OFFICE)