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設立趣旨

1992年の「世界栄養宣言」で世界的なコンセンサスを得ているように、今、世界中で8億人以上の人々が飢餓等の原因による栄養不良状態にあります。地球全体で食料は量的には足りていますが、さまざまなレベルでの分配が悪く、栄養学的に望まれる安全な食物へのアクセスは不平等です。こうした不平等をもたらす自然的・社会的条件は、抜本的に改善されなければなりません。

また、日本は市場等見かけは飽食ですが、個々人の食事は質・量が十分でない人が多く、その結果、心身両面で健康や生活上の問題を抱える人が多くなっています。

これまで、私たちは「食生態学実践グループ」として、食生態学の研究成果をふまえて、“子どもから高齢者まで、地球上に生活する全ての人々が、人間らしい食生活を営むことができるように、そうしたことが実現できる地域・社会であるように”と願って活動を続けてきました。

「食生態学」は1970年代の初めから、現場での栄養活動に行き詰まった人々からの強い要請を受けて生まれた、人間の食をめぐる新しい学問です。“生活実験や地域実験法を活用して、さまざまな地域で生活する人々の食の営みについて、環境との関わりで構造的に明かにし、更に、人々や社会・環境への適応法則性を解明すること”をねらって進められ、かなりの実績を積み重ねてきました。そして近年では、食をめぐるさまざまな課題の解決に活用できるようになってきました。

こうした願いをもっと着実に実現したい!もっと多くの人々と共有したい!と、私たちが結論としたものは、食を支える専門分野の人々やその活動に対し、食生態学や関連分野の研究・実践の成果を踏まえて支援する「特定非営利活動法人 食生態学実践フォーラム」の設立です。

近年、日本では食の重要性が強く言われ、「健康づくり・ヘルスプロモーションと福祉分野」「生きる力の形成を生涯を通してねらう教育分野」「食と農・フードシステムの両面からの調和と向上をねらう食料生産分野」など、多様なアプローチを多様な専門家によって進められるようになりました。いずれの分野も、取り上げる課題についての正しい理解、科学的な根拠と有効な方法についての知識・態度・スキル・価値観等が必要になります。しかも、その課題に対する解決は、人々がそれぞれの生活や人生をより充実でき、社会的貢献につながる、その人にとって楽しい、望ましい方向でなければなりません。

「特定非営利活動法人 食生態学実践フォーラム」の設立が必要なのは、これらの課題に十分な科学的な根拠を踏まえて、専門家とそれにかかわる人々とが連帯して取り組まなければならないからです。

  1. 食生態学や関連する分野の調査・研究
  2. 栄養・食を支える専門家の質を高める研修
  3. 食生態学や関連する分野に関するプログラム・教材開発
  4. 自然から食卓まで子ども自身が構想し実践する食育セミナー(食育とは、一人一人にとって生きがいのある健康な生活ができるような食生活を営む力を育てること、そうしたことが実践できる社会を育てることである)
  5. 情報発信

等の事業を行い、“子どもから高齢者まで、地球上に生活する全ての人々が、人間らしい食生活を営むことができるように”広く公益に寄与していきたいと切望いたします。

食は、本来、身体的にも精神的にも社会的にも、次の活力の再生産の源、いわば健康の資源であり、人間らしい生活・生きがいの資源です。私たちが活動法人として願うのは、まさにこうした人間らしい食、それを支える社会・環境の復権です。