JICA「クラスターアプローチ」
JICAの緊急援助隊の登録者(医療従事者等)を対象にした研修で、「栄養講座」を担当させていただいています。
週末、その研修があったのですが、今回は「栄養講座」以外の時間を、私も登録者として他の講義・演習を受けました。
多くの講座が同時に開講され、どれも魅力的なタイトルが並んでいるので選択するのが大変ですが、久しぶりにとても刺激的な時間でした。
ところで、国際緊急援助の仕組みは、ここ3年ほどで急激な成長(変化)を遂げています。
災害による緊急事態に対し、24時間以内に世界各国・団体の医療保健救援チームが集まり、相互調整しながら活動を行うわけですが、現場では様々な問題や矛盾がでてきます。
この状況に対し、同じ過ちを繰り返さないためにも、3年前から国連人道問題調整事務所(UNOCHA)が調整役となることが決まり、支援の仕組みが随時、修正、更新されるようになりました。
修正の根拠となる視点は、「人権」「人道主義」「中立」「安全保障」です。
今、強化される方向にあるのは「クラスターアプローチ」です。
災害時特有のテーマ(クラスターと呼ぶ)ごとに各国・機関が会議に参加しアプローチを共有し方針を決定します。
クラスターは9つあり、
①早期復旧
②キャンプ運営
③人民・人権保護
④水と衛生
⑤保健
⑥栄養
⑦シェルター
⑧通信
⑨ロジスティック です。
①?③は横断的問題、④?⑦は直接支援、⑧?⑨はサービスというカテゴリーで分類されています。
つまり、国際緊急援助の世界では、「保健」と「栄養」は別のクラスターなんです。
最初にこれを知ったときは感激しました。
保健や教育に含まれない「栄養」の文字をみるのはまれですので。
今のところ、JICAは「保健」クラスターにのみ直接参加しています。
「栄養」クラスターには間接参加しています。
しかし、今後、参加クラスターを増やすことが決まっており、その候補に「ロジスティックス」があがっています。
実はこのクラスターは「食糧を確実に住民に届ける」ことが主な検討課題となっていますので、「栄養」と密接に関係しています。
また、JICA緊急援助隊の「保健」クラスターでの機能拡充も検討されています。
拡充される方向にある1つは「公衆衛生」です。
緊急援助に「長期的視野で地域の活動を取り入れる」、「健康教育を行う」ことが重要であるという国際的な認識が高まっており、JICA研修でも「健康教育」講座が加えられました。
「Map Action]というNGOがあるのですが、彼らの作成するマップは多くの機関・国・団体から高い評価をうけており、緊急時マッピングのプロフェッショナル団体として有名になってきています。
講義・演習を通して、日本人の栄養専門家として、今後、国際緊急援助にどのような貢献をしていけるのかを考えさせられた1日でした。
石川 みどり(フォーラム運営委員)