旬な話、秋刀魚の話
立秋を過ぎ、ニュースでもサンマの話題が聞かれるようになってきた。
しかし、今年のサンマ漁は7月上旬に解禁されて以降、不漁が続いており、価格高騰が懸念されている。
水産庁によると、北西太平洋の今年のサンマの量はおおよそ221万トンで、昨年より4割減少するとの予想、酷暑となった今年の異常気象が何らかの影響を与えているようだ。
サンマは落語、詩歌、映画など庶民文化の題材になるほど、その季節性やおいしさが定着している。
しかし、一般的に食べられるようになったのは江戸後期になってからで、元禄時代に書かれた食材事典「本朝食鑑」にはサンマの記載はない。
1700年頃、紀州で開発されたサイラ大網による漁法がしばらくして房総に伝わり、サンマが大量に江戸に送られるようになって、江戸の庶民の味覚として一気に広まったといわれている。
「サンマの医者いらず」「サンマが出るとアンマが引っ込む」ということわざがあるほど、サンマは滋養のある魚である。
「はしり」のサンマは、脂ののりが少なくそのまま焼くと身がボソボソするので、刺し身や煮物のほうがおいしく食べられる。
ごく新鮮なサンマの肝はトロッとしていて甘味があり、「サンマは肝を食べなければ意味が無い」とまでいわれている。
しかし、漁獲してから氷蔵で半日も経つと、苦味の強いアミンが生成されはじめ、24時間で完全に苦い肝の味になってしまう。
また、サンマは棒受け網漁で採る時に、ウロコはほとんど取れてしまうが、サンマの口の中にウロコが入り消化管に溜まっていることもあるので、肝を食べる時には注意しよう。
おいしいサンマの見分け方は、なるべく小さいものややせたものは避け、30cm以上でからだの幅がある大型のもので、尾の付け根と口先が黄色くなったものは脂質がのって味もよいとされている。
また、表面に光沢があり、目が充血していないものを選びたい。
高増 雅子(フォーラム運営委員、日本女子大学)