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2013-06-14

感動的、刺激的で、うれしい、すごい国際セミナーでした

今日、「香川栄養学園創立80周年記念栄養科学研究所国際学術セミナー」で、Mark L. Wahloqvist(マーク ウアルクビスト)教授の講演A time of Uncertainty & Change for Nutrition and Healthは感動的で、刺激的で、展望があって、食生態学の実践と研究にとって表現できないほどうれしいことでした。

テーマの通り、栄養や健康について、今は従来の学問が蓄積してきた枠組みや方法や答では対応しきれない重要な問題が次々に生じていて、しかも緊急に解決しなければならないほど重篤な問題が多い。
研究も実践も大きなパラダイムシフトが必要な時だ。
対応しきれない問題は計り知れないほど大きな環境変化(例えば気象変動や津波・福島原発事故)、その生物の生育過程のそれぞれに及ぼす影響やそれらの複合……人間の力では予測できない多様で深刻な影響の結果としての目の前の“食物”、一方で食べる人間側の生体内環境も含めていろいろ変化している。
だから、何が良い食べ物か、どのくらい食べたらよいか????
今の食生活指針がどこまで有効かを誰が知ることができよう、検証する方法も異なってくる……という中で、私たち栄養・健康にかかわる研究者はどうしたらよいか?
答え探しは難しい。
少なくても今使っている研究方法や枠組みで出てくる検証結果や答では十分でないこと、もしかすると間違っているかもしれないという見方ができること。
そしてそうした視点で議論ができること。
少なくても食物や栄養を分析した成分だけでなく、生態系とのかかわりで見ることが必要な時だ……と繰り返されました。
若い研究者や実践者はこうした議論をする勇気を持つべきだ、と繰り返されました。

マーク教授は国際栄養科学連合(IUNS)元会長で、Asia Pacific Journal of Clinical Nutritionの初代編集委員長で、国際的に栄養学研究やその成果をふまえた栄養政策を動かしてきた大人物で、大きな学会場では個人的な質問をすることができるチャンスはとても少ない方です。

今日は少人数でしたので、講演が終わってから、私は「さかな丸ごと探検ノート」とその英語版を差し上げて、食生態学(Ecology of Human and Nutrition)の構築に挑戦していることや、子どもたちにもこうした視野や視点を育てたいと食教育教材を開発して活用していること等を、自己紹介しました。
そしたら英語版の表紙タイトルを見て、「僕はあなたの論文を読んでいる。A Holistic view of Food and Nutrition dynamicsの図を書いた人ですか?」と問われました。
例の「人間・食物・環境の循環図」のことです。
そして、「日本にも今日話したような危機感を持って栄養学に取り組んでいる仲間がいることがうれしい」と。

講演の内容に感動していた上に、私たちが食生態学研究と実践の基本にしている概念図を評価していただき、感無量で帰宅しました。

食生態学実践と研究を共に育ててきたフォーラムの仲間や多くの方々に感謝し、この感動を分かち合いたいと、恥ずかしながら書きました。

もう一人の講演者Colin W. Binns(コリン ビンズ)教授のProgress and challenges in infant nutrition and public health も3歳までの栄養を”The 1000days that make a life”と位置づけ、刺激的でした。
また別の機会に紹介したいと思います。

足立己幸(フォーラム理事長)