toggle
2014-12-21

“きしめん” 食べたことがありますか?

今朝、通勤中、信号待ちをしていると、東海地区を中心に展開しているそば屋チェーン店が視界に入りました。
店名の看板の横に“名古屋名物 味噌煮込みうどん 手羽先”と、のぼりが掲げてあります。
ふと、不思議に思ったのは“きしめん”はどうした?“きしめん”は“味噌煮込み”と並ぶ名古屋名物ではないのか。
最近よく名古屋の人々が“きしめん”を食べないという話題を耳にします。
食べないから売れないのか、売らないから食べないのか・・・。

“きしめん”の語源は、「原型は麺でなく碁石型だった故に、“碁子麺”が転じて“きしめん”となった」という説や、「紀州の者が作った“紀州麺”(きしゅうめん)から“きしめん”となった」という説、三河池鯉鮒宿(現知立市)で雉の肉を入れたうどんが好評で雉麺(きしめん)と呼ばれて名古屋にまで伝わった説など諸説あります。
形状は見た目が薄くて平たい形状の麺です。

麺の調理上での特徴は、生地を薄く伸ばすのでうどんと比べると麺が長く、薄く平らなので茹でる時間が短い。
水と小麦粉と塩を練って作る点はうどんと同じだが、うどんよりも平たく延ばすために途中で切れたり折れたりする場合があり、うどんと比較してコシは非常に弱い。

どうやら、この「うどんと比較してコシは非常に弱い」ということが、一般的になってしまったことが、名古屋の人々を“きしめん”離れにしている原因のようです。

昔は当然ながら、きしめんに限らず、麺は職人さんが打っていました。
きしめんはひじょうに打つのが難しく、コシの強い麺を打つために、職人さんには高度な技術が求められていたようです。
しかし、技術が進歩し麺を大量生産する時代になりました。
職人さんの技術は機械に引き継がれることなく、コシの弱い麺のみが広がってしまったそうです。

名古屋の人たちは本当の“きしめん”を食べる機会が減ってしまったということですね。
むしろ、県外からの人の方が、物珍しさから食べることが多いとか。
以前、勤めていた高齢者福祉施設の入所者の方が「〇〇屋のきしめんは、おいし~よ」とおっしゃっていたことを思い出し、お店の名前を憶えておけばよかったと後悔しています。

安達内美子(フォーラム運営委員、名古屋学芸大学)