胴締めの小鉢
例年、野球のオフシーズンの1月ころに東京ドームでTABLEWARE FESTIVALが開催されます。コロナの感染への懸念や年度末を迎えた仕事もある等ためらいもしましたが、胴締めの小鉢(写真左下の器のよう形、ここでは器Cと略す)がほしくて、この機会にと探しに行ってきました。勿論、カレンダーの撮影等に関わって、TABLEWAREの動向を知りたいこともありました。
一般的に、写真右側のA赤絵とB志野は和え物に、左側の染付の胴締め(器の胴部が紐で締めたような形)のC・Dの2つは、煮物用に多く用いられるサイズです。器Cが重宝されるのは、煮物ばかりでなく和え物にも使えることです。それは淵が1cmほど垂直に立ち上がっているために、量が抑えられ、和え物の盛りつけとして典型的な“杉盛り”にも合うからです。
器Cは、器A・器Bより容量はやや大き目ですから、嵩の張るキャベツ、白菜、菜の花等の和え物などにぴったりです。また、数種の根菜を合わせた煮物は山高にこんもりと盛るのに崩れやすいものですが、本来の煮物鉢として、胴締めの器は胴の下部分が土台になり崩れにくくなり、上部に見栄えよく盛りつけることができます(それぞれを見せた寄せ盛り風に)。
FESTIVALでは、国内外の有名ブランドの高級なディナーセットや日本の有名窯元の高価な和食器もたくさんありました。リーズナブルな食器も多く見かけましたが、胴締めの器は1店舗のみでDタイプしかありませんでした。器Cに出会えないのは、絵柄だけでなく、形や大きさ(内径4寸(12㎝)、容量1合5尺(270mL))からも、少し古いタイプの器であるためと思っています。
これまで、椀や鉢物が多い日本の料理・食事の食器は、それぞれの器に対する料理の適量があり、弁当箱は食事のはかり、食器は料理のはかりとなることも確認してきました。※
「3・1・2弁当箱法」をテーマにした研修会等の演習では、弁当に詰めた料理をそれぞれの器に盛り替えて食卓に展開することを重視し、普段の食卓の食事での確認も促しています。その際に、主食のめし茶碗、主菜皿、副菜の小鉢などを用いて、食器と料理・食事の密接な関係を紹介してきました。
実は、器Cは割ってしまい、写真はテープで貼って撮りました。割れても捨てられない理由の一つは、料理と器と関係について、物相の形等の多様な器と盛りつけも含めてとらえることを示唆してくれた器でもあります。さらには、1985年ころ、故上畑銕之丞先生の湯布院での「中高年男性の短期保養セミナー」の際、先生と街歩き中に骨董店で見つけたもので、思い出も詰まっているからです。これらの理由からも今後も探すことになりそうです。
齢を重ねると、人や思い出がつながって捨てがたい器や道具ばかりで、日々の食事づくりを楽しくしてくれるし、終活は遅々としてすすみません。
※足立、針谷他共著:よりよい食生活のために-食事づくりの基本、農業経営大辞典6p188-216、学習研究社、1984
針谷順子(フォーラム理事長)