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2011-02-28

現役30年

2歳半の娘は保育園にお世話になっています。
スプーンを使って食事も器用にひとりで出来るようになってきました。
園では、言葉の伝わりにくい2歳児にスプーンの持ち方を教える際、拳銃に見立てて『バキューン持ち』といって教えているとか。パーの手から、中指・薬指・小指を折り曲げ、親指と人差し指の間にスプーンを渡してそっと握ります。
これが結構分かりやすいようで、娘は自分の持ち方もさることながら、他人の持ち方まで注意しているというお節介ぶりを発揮しているようです。
昨年に比べると減ってきましたが、まだ食べこぼしがあるため、1日3組のタオル製エプロンとおしぼりを持参しています。エプロンはタオルを二つに折りゴムひもを通すだけの簡単なものですが、これらを作るのに活躍しているのが30年モノのミシンです。
IMG_0157_2.jpg

娘の入園当初、必要だからとミシンの購入を考えました。シンプルなものから液晶付多機能のものまで様々あり、価格も多様。どんな物がいいのか迷っていたら、主人の実家にあるミシンを頂けることになりました。但し動けばの話。長く使っておらず、存在も不確かなほど家族の目に長く触れていなかったこのミシンが、発掘され、電源を繋ぐと動きました。
義父母は、いつ買ったかも忘れてしまったと言いますが、おそらく38歳の夫が幼稚園にあがる際嫁入りし、義母の右腕となり当時はせっせと小物入れや通園バッグなどを作っていたのでしょう。
直線縫いだけのシンプルな電動ミシン。その重さは毎回気合を入れないと持ち運び出来ないほどで計ってみたら15kgもありました。まるで鉄の塊。娘13kgとほぼ同じ重さで私と同世代です。

義父が説明書はもう無いよ、と言うので夫がメーカーに問い合わせると、送料200円程で30年前の紙製の取扱説明書が手元に届き、また驚きました。そのメーカーは、今や世界に名を馳せる大企業でもあるけれど、いちユーザーも気に掛けてくれている気がして嬉しくなりました。

そう言えば、私の職場である老人保健施設を利用しているSさんも、自室にクラシックな足踏みミシンを置いています。昔、友人の娘さんにウェディングドレスを作って差し上げたと話していました。そのミシンは、おそらく50年はゆうに経っています。最近は体の負担も増し、ミシンに向かうことはあまり無い様子ですが大切にされている想いはすごく伝わってきます。
実家で母が愛用しているミシンは、正に嫁入り道具だった足踏みミシンで、こちらは40数年。私が使うと動かないのに、母が使うと動くことはしょっちゅうで、「愛情を持って使えば動く」みたいな人と物との関係を感じました。

子どもが出来て気付くことは沢山あります。大抵のものは直すより買い替える方が安くて便利な暮らしに慣れている中、良いものを長く、大事に手入れをして愛着を持って使うことの大切さを、うちに嫁いできたミシンを持ち上げる重みと共に毎回実感しています。

先日開かれた保育園の懇談会で、「3歳児になるとエプロンは1日1組しか要らなくなりますよ。」と担任の先生が話していました。毎日大変だと思っていた子育てに関する物事から、開放されてしまうことの寂しさも、ふと思いました。子どもの成長と共に、自分の生活も、一日一日を大事にしたいと思います。

佐藤亜希子(運営委員)