閖上プロジェクト
宮城学院女子大学では、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた名取市閖上地区の復興支援プロジェクトを行っています。
名取市閖上は宮城県南部沿岸部にあり、人口は大震災前約5,600人でしたが、大震災により約800人が犠牲となりました。
現在、閖上地区には住居(人々の暮らし)はなく、プレハブの復興市場がある程度です。
また、復興については、内陸移転を希望する住民と海辺での再建を求める住民とで話し合いが進んでいません。
閖上地区は、名取市街地から離れた飛び地になるので、独特の文化をもっているといわれているのですが、その存続が危ぶまれています。
平本ゼミでは、食からの復興支援で大学のプロジェクトに参加しています。
そして、閖上地区の食の暮らしを思い出し、そのよさをどのように遺していったらよいかを、閖上の多世代の住民と一緒に考える活動をしたいと考えています。
現在、進めているのは、大震災前の閖上の食マップづくりです。
閖上の方々が、かつて、どこで食材を買い、どこの店で食べ、みんなで語り合っていたのかなど、震災前の食の暮らしを振り返り、今後の閖上のありかたを考えるための“媒体”になれればと思います。
先日、閖上の方々が住んでいらっしゃる仮設住宅にうかがい、白地図をひろげて、食料品店や飲食店、かまぼこなどの製造業者、食の暮らしにかかわるところを地図に書き込んでもらうことをしました。
みなさん、「あ、ここのコロッケおいしかったよね」「この2階で、駄菓子売ってたよね」「ここのスナックでカラオケやって飲んだよなあ」の話が出て、こちらが書き込む時間がなく「ちょっと待ってください。お一人ずつ、お願いします」というくらい盛り上がりました。
そして、「何もなかったら話ししづらいけど、地図があるから、思い出せたよね。楽しかった」と言っていただきました。
まさに、話をうかがい、地図を作ることが復興への道になっていると感じました。
また、閖上地区は家の鍵をかけないのは当たり前といわれていて、今はもう少なくなった近所づきあいが残っている地域です。
ですので、食物のやりとりに閖上らしさがあるのではないかと聞き取り調査をしています。
東日本大震災からの復興は、まだまだ途上です。
被災地の大学にできることを、少しずつ進めています。
平本福子(フォーラム理事・宮城学院女子大学)