子ども食堂ボランティアでの新たな楽しみ
私は、川越市内のH子ども食堂とさいたま市大宮区内のC子ども食堂に、食事づくりのボランティアとして、いずれも月1回参加しています。H子ども食堂は学習(塾)支援活動から出発しており、今年で10年目を迎えています(活動の一部は2023年3月31 日発行のNews Letter 62号に紹介)。C子ども食堂は工作など体験学習との組み合わせで、今年で2年目になります。ここではC子ども食堂の食事づくりについて、その一端を紹介します。
C子ども食堂では、多くの子ども食堂と同様、活動の企画実施を担う主催者をはじめ、食事づくりボランティアは、家庭を持つ女性が主体になっています。特徴的なのは、中学生、高校生、大学生のボランティアがほぼ半数で6~7名おり、中学生のボランティアスタッフには特別支援学級の生徒が参加するなど、多様なスッタフから成り立っていることです。
この中学生との関わりは、昨秋の「さかな丸ごと食育」のサポーター学習会に、N中学校が参加したことがきっかけになりました。『さかな丸ごと探検ノート』の「生産・流通」における魚との出会いや体験で生き生きとしたエピソードを聞かせてくれました。「さかなパワーをいかしたおいしい料理づくり ちくわのチーズ焼き」では、工夫を加えて先生方にも食事のプレゼントができました。この行動に引率の先生方から、うれしい評価をいただきました。
先月7月の子ども食堂実施日には中学生男子3人が参加し、30人分の副菜・スープづくりを、私は3人と一緒に担当しました。
- 食事構成のこと:主食・主菜には野菜は付け合わせ程度なので、汁は野菜たっぷりで副菜になること。
- 料理としての汁のこと:汁はだしと実で構成されること。さらに実となる材料の役割、例えば豚肉はだしの材料の役割を兼ねていること。
- 調理のこと:材料の玉ねぎの洗い方、むき方、切り方。切り方に至っては包丁の持ち方等……演示と共に説明をしました。具体的な場面では、どうするかを3人で話し合って決めてもらいました。
- 調味のこと:塩分濃度・調味パーセントの話をして、今日は具が多いから7%を目安にしてはどうか、調味は最後にした方がよりおいしいと思うと提案しました。3人で計算をして、塩を計り「料理は数学みたい!」。大量調理の経験のない3人は、塩の多さに加えるのを躊躇しているので、「少し控え目にして、味を見て、足りなければ足したらいいよ」「え! 僕たちが味をみて決めるの?」「そう、おいしいと自信を持って皆には食べてもらいたいでしょう!」「(塩を少量残して)「これでちょうどよい味と思う」「今の味はそうだね。でも30人全員で食べるまでには時間がかかるし、今日の汁は実が多いので、その間に実の方に塩味が移って薄くなると考えるので、この段階では少し濃い目がよいと思うよ」「なるほど、じゃあ全部入れよう!」3人で、味をみて、盛り付け、配膳して提供。食事をしながら「味はちょうどよかったね」と満足そう! このやり取りをそばで見ていたスタッフからは「ほほえましい」と声が上がりました。
私への話かけはまだ積極的とは言えませんが、3人での話し合いは活発です。説明にはうなづきや「そっか」等の反応を確認しつつすすめました。初めての体験と思われる3人なので、説明しすぎ? と思いつつも「基本のき」なので繰り返すことによって、どこかに興味を持ってもらえれば、次につながるのではないかと考えています。
私は、食事づくりを通したこのような小さな達成感の積み重ねが、自己肯定感を育てる一助になってほしい、さらには、子ども食堂が生涯にわたる友だちづくりや居場所になってほしいと願ってやみません。
彼らとの食事づくりの楽しみはこれから。約束のボランティア期間を延長しそうです。
針谷順子(フォーラム理事長)