旬のさかな 「若鮎」
季節を告げる話題が少ない中、6月1日鮎釣りの解禁を知らせるニュースが届いた。
6月1日に解禁になったのは、関東では、多摩川、相模川、吾妻川、利根川等の一部の河川ではあるが、釣り好きの人にはたまらないようだ。
1日の遊漁料は、1000~3500円とのこと、鮎の人工産放流量も河川によってずいぶん差があるようだ。
鮎は、秋に卵を川の中・下流の川底の石に生み付け、孵化した稚魚は流されて海へ下り、冬の間は海で過ごす。
春になると、5~6センチに成長した若鮎が川を上り、上流の川底の石についた藍藻や珪藻を食べる。
石についている藻を食べた鮎は香気がある、またはすいかの香がするといわれ、香魚(あゆ)とも書かれる。
夏、上流で過ごした鮎は、秋になると産卵のため下るが、これを落ち鮎と呼んでいる。産卵を終えた鮎の大部分は寿命がつき、1年で一生を終えるので年魚(あゆ)とも書かれる。
若鮎は、塩焼きのほか、天ぷらや空揚げにしてもおいしい。
鮎は塩焼にし、蓼酢(たでず)を添えるのが一般的だが、この蓼は「蓼食う虫も好き好き」のもとになった草で、谷崎潤一郎の小説の題名にもなっている。
蓼の刺激のある辛味が鮎の味を引き立てる。
蓼は河原にも生えているが、主に食用蓼は福岡県で栽培されている。
蓼酢は、蓼に塩少々を加えすり鉢ですって、それに酢を加えた合わせ酢であるが、鮎に絡みやすいように飯で粘り気を出す場合もある。
塩焼きにした鮎で、鮎飯や鮎雑炊にしてもおいしい。
鮎鮓も、古代からよくつくられていたそうだ。
この鮓は生馴れ(なまなれ)で、塩漬にした鮎を米飯と交互に鮓桶に詰め、数日から1ヶ月ほど漬け、乳酸発酵の酸味が少し出たところで食べる。
中には2年も漬け、魚だけを食べることもあったそうだ。
その他、鮎の風干し、一夜干し、甘露煮等様々に加工し、保存食にもなる。
酒の肴、珍味といわれている「うるか」は、鮎の内蔵の塩漬けであるが、白子と卵巣を塩漬けにしたうるか、鮎の身を混ぜたうるか等がある。
作り方は、材料を塩漬けにするだけだが、寄生虫などが心配な場合は一度冷凍したり、酒で洗った方がよいといわれている。
高増 雅子(フォーラム理事、日本女子大学)