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2024-07-10

“おにぎり”づくりから拡がる「食」の世界

ご飯の炊ける匂い、どんな具にしようかと悩む姿、アツアツご飯を握る小さな手、大きな口でほおばる姿、おいしさに満足げな目・・・、どれも子どもたちの食体験の力を再発見させてくれる体験でした。

6月末の土曜日。仙台市内のH児童クラブ(学童保育)で、1,2年生7名とおにぎりづくりをしました。おにぎりづくりはどこでも実践されていますが、仙台市の児童クラブで実施するのは画期的なこと。なぜなら、仙台市では児童館内での運営、おやつは各家庭から持参、10年前より保護者会なしなど、全国の傾向と著しく異なっていて、私たちは今まで関わるのを躊躇していたからです。

3年前に、全国の仲間と一緒に「学童保育の『食』を考える会」を立ち上げたものの、地元仙台で何もできないことに悩んできました。そこで、まずは、現場の子どもやスタッフに負担をかけないことを念頭にして選んだのが、おにぎりづくり。もちろん、児童館に炊飯器はないので、食材や調理器具を持参して。

はじめて出会う子どもたちと自己紹介をしあったら、さっそく米を計ることに。子どもだけでなく、大人もいるので、米は2つの炊飯器で7合ずつ。なんと、子どものお父さんも見学で参加。

はじめて計量カップで米を計る子の、カップの淵をすりきる指の動きがおずおずといかにも自信なさそうで、思わず「それでいいよ!大丈夫!」と声をかけました。「ああ、子どもってそうだったんだよなあ」と、改めて幼い子どもの食体験の意味を思い起こさせてくれたできごとでした。

うちのチームは途中で何杯入れたのか、わからなくなるというアクシデントが。「5杯だっけ?6杯だっけ?」子どもたちは顔を見合わせながら無言のまま!!そこで、計った米を全部ボールに戻して、最初からやり直し。今度はみんなで声を出しながら計ることにしました。失敗しても、やり直せばいい、ただそれだけのこと。米を計ることだけでも、幼い子どもたちは一喜一憂なのです。

次に米を洗います。私がまずやってみた後で、子どもたちが順番にやることに。私が手早く水を流そうとして、米が少しこぼれたところをこどもたちは見逃さず、「あっ、米がこぼれた」と。すると、次のJ君が「米を手で押さえてから、水を流したら」と見本?を見せてくれました。それを見ていた次のNちゃんは、しっかりと手で米を押さえ、ゆっくり水を流します。私のそそっかしさが、子どもたちの予期せぬ学びの場になりました。

ご飯が炊けてくるといい匂いが部屋中に広がり、子どもたちが「ご飯、炊けた!」と気づきます。

いよいよおにぎりづくり。まず、ラップの上にご飯をのせます。ご飯の量は大人に盛ってもらったり、自分でとったり様々ですが、自分で納得するごはん量を自分で決めます。

次に、おにぎりに入れる具(ゆかり、昆布、ふりかけ(のりたま、青菜かわめ)、おかか、サケそぼろ、ツナマヨ)を選びます。子どもたちは事前に決めていたのか、意外に決めるのが早い。

次に、ラップをぎゅっと握って、おにぎりにします。ぎゅっと握るのが心配でやさしく触っている子、三角のおにぎりにする手の持ち方を聞いてくる子、形は気にせず上から押さえる子などなど、子どもによって、実にさまざま。海苔もつけたい子がつけます。

ひとり、おにぎり2個なので、もうひとつつくります。すると、2個目はご飯を取るところから握るまで、ほとんどの子が黙々と自分で考えながらやれるのです。この様子を見て、大人たちは子どもたちの学習能力に目を見張りました。子どもの力ってすごい!

早くつくり終えた子が、即席の味噌汁に湯を注ぐのに忙しい支援員等のスタッフのおにぎりもつくることに。子どもが「どの具がいいですか?」と聞くと、「私のものをつくってくれるの?うれしい!」との声が返ってきて、恥ずかしそうにしながらうれしそうな子どもの表情が。おにぎりをつくるだけで、こんなあたたかな関係づくりができるのかと。

子どもの「いただきます!」のかけ声で昼食タイムに。自分でつくったおにぎりを大きな口でほおばる姿には、満足感と小さな自信が見えます。さっさと食べ終わり、おかわりのおにぎりをつくる子もいて、にぎやかな雰囲気に。大人も「つくりたてのおにぎりっておいしいね!コンビニのと全然違う!」と、そのおいしさを再発見。何よりも、普段とは違う子どもたちの楽しそうな姿を見て、大人たちが満足げな表情をされていたのが心に残りました。

“おにぎり”作りのパワーはすごい!

私たちは炊飯器を背負いながら、仙台市内の児童クラブを行脚する計画をひそかに進行中です。

 

平本福子(フォーラム副理事長)