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2024-07-18

愛知県の「きぬあかり」をご存知ですか?

東海地方の今年の梅雨入りは、平年より2週間以上遅れ、6月21日ごろでした。

梅雨入りはいつかになるのか? これも気候変動のせいだろうか? と思っていた6月15日の土曜日に、愛知県の農業振興に関わる方々とお会いする機会がありました。その時に、今週は雨が降らなくて、ありがたかったという話を聞きました。私は、本来雨が降る時期にはそれなりに降った方がよいと思っていたので、驚きました。

しかし、それには理由がありました。東海地方では、6月は小麦の収穫時期なのです。雨が降ると作業効率が悪くなるだけでなく、収穫前の小麦は雨にあたると品質が落ちやすいそうです。

なるほど、日本で特に東北より南で小麦の栽培が難しいはずだと思いました(梅雨のない北海道は8月、東北は7月が収穫時期だそうです)。

日本は気候だけでなく、土壌や水質も、稲作に向いている地域が多く、さらに小麦に比べて収量が多いため、米を主食にしてきました。

農林水産省によると、それでも小麦は、江戸時代よりも前から米の裏作として、各地で生産されてきたとのこと。明治以降、欧米の様々な小麦料理が伝わり消費が増えたことで、飛躍的に生産が拡大し、昭和初期には、自給率が100%を超えていた時期もあったそうです。戦後は、一時生産量は回復したものの、米と比較して収益性が低かったことや生産が不安定だったこと等により、その後、生産が減少に転じて、1973年には自給率4%にまで落ち込んだそうです。しかし、オイルショックなどを経て、食料自給率を高める必要性が認識され、小麦増産のための農地整備、機械化、品種・栽培技術の改良などが進み、今では95万トン、自給率15%(2020年度)まで生産量が回復しているとのことです。

近年、愛知県では「きぬあかり」という日本麺用小麦品種を開発しました。愛知には「きしめん」「味噌煮込みうどん」など、独自のめん文化があります。「きぬあかり」は、愛知の食文化を愛知の食材で、という想いに応える、待望の品種なのです。

6月の最終週、高校1年生の娘の定期試験中のある日、弁当づくりから解放されて、学生食堂で冷たい「きしめん」を楽しみました。

 

<参考文献>

農林水産省;その9:小麦の自給率.https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-11.html(2024年7月17日アクセス)

愛知県;小麦「きぬあかり」.https://www.pref.aichi.jp/soshiki/engei/kinuakari.html(2024年7月17日アクセス)

伴佳典;愛知県の小麦収量3年連続日本一の秘密.季刊農業と経済.2022 Winter (2022);153-160

 

安達内美子(フォーラム運営委員、名古屋学芸大学)