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2025-07-31

アカバのみそ汁

私の夏の海での思い出に「アカバのみそ汁」があります。40年ほど前の話になりますが、小笠原の父島で、沖に出てシュノーケリングを楽しみました。また、船長さんが釣り糸を垂らして魚を釣って「アカバのみそ汁」を作ってくれました。魚の釣り方もとてもシンプルで、釣竿はなく指に糸を巻いて垂らすだけ。水はとても透き通り太陽光も深くまで届いているため、魚がかかったことがよく見えます。釣った赤い魚をさばき、ぶつ切りにし、玉ねぎとみそを入れて作ったみそ汁は、何ともいえない、おいしいみそ汁でした。

私の父は魚があまり得意ではなかったので、家で食べる魚は限られており、みそ汁に魚を入れるというのも初めての体験で、とても衝撃を受けました。家に帰ってからアカバのみそ汁の味が忘れられなく、アカバのみそ汁の「アカバ」って何だろうとずっと考えていました。当時は本で調べるしかなく、本を探してみても地方の呼び方から引くものが見当たらず、魚の種類はわかりませんでした。

そのような中、10年ほど前に「アカバ」はアカハタの小笠原での呼び方だと知りました。以来、新鮮で手ごろな値段で手に入ったアカハタを身は刺し身にし、骨などのあらは玉ねぎを加えてみそ汁にして楽しんでいます。刺し身は甘く適度な弾力があり、とてもおいしい白身です。また、アカバのみそ汁はちょっとエビに近い香りを感じます。アカハタは高級魚であり、手軽に手に入る魚ではありませんのでなかなか食べられないのですが、アカバのみそ汁を味わうと当時の父島の青い空、透き通った海、そして楽しかった風景がよみがえってきます。

ネット検索が充実した現在では、「アカバ」と検索をするとすぐに「アカハタ」と調べることができます。簡単に情報検索ができて、まさに情報化社会だと感じます。しかしながら、この味を伝える言葉はなかなか検索できません。味覚を伝える方法ももう少し発達するとよいかもしれません。そんなことを考えるこの頃です。

 

大山珠美(フォーラム運営委員)

 

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